酸化ストレスが顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの原因遺伝子DUX4を増加させる

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は遺伝性の進行性筋ジストロフィーですが、骨格筋に毒性をもたらすDUX4という遺伝子の異常発現が原因と考えられています。DUX4は第4番染色体のテロメア近傍(4q35) のクロマチン構造の変化という細胞内の異常で発現しますが、細胞外の要因でDUX4の発現が変わり得るのかは分かっていませんでした。

今回、当研究室、本田充 大学院生(京都大学CiRA臨床応用研究部門/東京大学大学院理学系研究科より学外研究)らは、FSHDの患者さん由来iPS細胞から作製した骨格筋細胞を用いて、酸化ストレスがDUX4の発現を増加させていることを確かめました。

さらに、FSHD 由来骨格筋細胞にCRISPR/Cas9を使ったゲノム編集を行い、酸化ストレス状況下においてDUX4を抑制させることに成功しました。

また、酸化ストレスからDUX4の発現までの機構にDNA損傷応答シグナルが介在していることを突き止めました。

これらの結果は、過運動、筋損傷や炎症などがもたらす酸化ストレスが、FSHDの進行を促進させる外的リスクファクターの1つであることを示唆し、FSHD治療の進歩が期待されます。

この研究成果は2018年8月9日に英国科学誌「Human Molecular Genetics」でオンライン公開されました。

詳しい研究の内容はCiRAホームページのプレリリースをご参照ください。

http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/180827-150000.html