デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、筋肉にあるジストロフィンというタンパク質が欠損することによって発症する進行性の重篤な筋疾患で、根本的な治療法は開発されていません。また、DMDでは、病状の進行に伴い呼吸機能の低下し、呼吸器不全に至り、致死的な病態となります。
呼吸機能は主に横隔膜の動きに依存します。ジストロフィン陽性筋線維を再生する方法として細胞移植治療が期待されていますが、これまで疾患モデルマウスの横隔膜への細胞移植に成功した報告はありませんでした。
三浦泰智 元特別研究学生・元非常勤研究員(京都大学CiRA臨床応用研究部門)、田畑泰彦教授(京都大学医生物学研究所)、櫻井英俊准教授(京都大学CiRA同部門)らの研究グループは、これまでにヒトiPS細胞から高い再生能を持つ骨格筋幹細胞の誘導に成功しています(CiRAプレスリリース2020年7月3日「筋ジストロフィーマウスにおけるヒトiPS細胞由来骨格筋幹細胞の移植効果を確認」)。そこで、DMDの呼吸機能改善を目標に、この骨格筋幹細胞をマウスの横隔膜に移植することに成功しました。移植効率向上を目指して移植基剤の検討をした結果、デュシェンヌ型筋ジストロフィーモデルマウスの前脛骨筋にヒアルロン酸とゼラチンの混合ポリマーを基剤として細胞を投与すると移植効率の上昇がみられることがわかりました。また、横隔膜への移植においても、この混合ポリマーを使用することで、移植不成功率を下げることがわかりました。本研究は、将来の細胞移植治療の実現に貢献できると期待されます。
この研究成果は2022年4月4日に米国科学誌「PLOS ONE」でオンライン公開されました。
詳しい研究の内容はCiRAホームページをご参照ください。
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/220413-130000.html